休眠会社とは?メリット・デメリットや手続きについて詳しく解説します
会社を経営していると、事業継続が難しくなるケースもあります。この際に行える手段の1つが「会社を休眠させる」ということです。休眠会社とはどのようなものなのでしょうか。本記事では、休眠会社の概要やメリット・デメリット、手続きについてご紹介します。
休眠会社とは
法律上による休眠会社の定義は、「最後に登記した日から12年間経過した株式会社」とされています。株式会社には取締役などの役員が定められており、任期は通常2年、長い場合でも10年です。任期満了した場合、役員変更の登記が必要です。ただし、企業活動を行っていなければ登記変更が生じないため、法律上では休眠会社として扱われます。
休眠と廃業の違い
休眠と廃業の大きな違いは、事業の再開が可能かどうかです。事業活動を行っていない会社には、「廃業」という方法もあります。廃業を行うと、株式会社は解散となり、消滅します。こうなると、元のようには事業を再開できません。
休眠は、事業を行っていませんが、会社自体はそのままです。このため、活動を再開しようと思えば、再開することが可能です。
休眠会社のメリット
休眠会社には、主に以下のようなメリットがあります。
法人税や消費税が不要
休眠会社には、法人税や消費税などの税金が課せられません。法人税は会社の所得に対して、消費税は事業者の事業に関する取引に対して課される税金です。休眠会社は一時的に事業を行わず所得を生み出さないため、法人税は発生しません。また、事業も行わないので課税されないのです。
いつでも事業を再開できる
休眠会社の場合、廃業と違っていつでも事業を再開できます。会社を経営していると、やむを得ない事情で、事業を休眠しなくてはいけないこともあるでしょう。もし廃業を選んでしまうと、事業を復活させられません。休眠会社であれば、経営状態の回復や後継者への事業譲渡などで、事業の再開が可能です。
手続きが比較的簡単
会社を休眠させるための手続きは比較的簡単とされています。法務省での登記や確定申告などは不要で、税務署や市区町村役場へ届出書類を提出するだけです。このため、休眠のための費用や手間が最小限で済むでしょう。
許認可の再取得が不要
廃業を行った場合、再び新規で事業を行おうとした場合には、許認可を再取得する必要があります。休眠会社の場合、休眠前に取得していた許認可は、一般的に取り消されることはありません。このため、許認可の再取得に関する手間が不要です。
廃業のコストを省ける
廃業を行うためには、解散および清算人選任の登記、清算結了登記などの事務手続きが必要です。解散および清算人選任の登記には39,000円、清算結了登記には2,000円の費用がかかります。また、手続きを司法書士や税理士に依頼すれば、報酬を別途支払う必要があります。休眠を選べば、こうしたコストを省くことができます。
休眠会社のデメリット
メリットの多い休眠会社ですが、デメリットもあります。ここでは、主なデメリットについてご紹介します。
みなし解散になる恐れがある
役員変更登記を行わず、最後の登記から12年以上経過すると法務局の整理の対象となる場合があります。その場合、「みなし解散」となり、解散登記がされてしまうのです。廃業ではなく休眠を選んだとしても、放置すれば強制的に廃業と同じ状態となります。
ただし、解散登記をされても、すぐに会社がなくなるわけではありません。会社が解散されたとみなされた日から、3年以内に会社継続の決議を行い、2週間以内に会社継続の登記をすれば、みなし解散の状態を脱せられます。
事務処理に手間がかかる
休眠する場合は、役員の任期満了に従って役員変更登記の事務手続きが必要です。この作業を行わないと、「みなし解散」とみなされて強制的に会社が解散させられることもあります。
また、利益がゼロでも法人税などは期限内申告を行わなくてはいけません。青色申告は期限内申告が前提のため、提出しないと青色申告が取り消されてしまいます。青色申告が取り消されると、事業再開時に追徴課税を受けるので注意が必要です。
休眠会社にするための手続き
休眠会社にするためには、各行政機関に書類を提出しなくてはいけません。主な必要書類と提出先は以下の通りです。
提出先 | 提出書類 |
税務署 | 異動届出書、給与支払事務所の開設・移転・廃止届出書 |
都道府県税事務所 | 異動届出書 |
市区町村役場 | 異動届出書 |
労働基準監督署 | 労働保険確定保険料申告書 |
年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届、資格喪失届 |
ハローワーク | 雇用保険適用事業所廃止届、資格喪失届 |
手続き自体は上記の届出を出すだけなので、費用は不要です。ただし、税理士や社会保険労務士などの専門家に依頼した場合、報酬が必要になるので注意しましょう。
休眠会社のメリット・デメリットを知ろう
会社を休眠させると、コストがあまりかからず再活動が容易であるなどのメリットがあります。ただし、休眠のための手続きを行っていないと、みなし解散とみなされる恐れもあります。また、休眠しても会社を維持するためのコストは必要なので、休眠か廃業かは長い目で見て判断しましょう。
参考サイト
https://the-owner.jp/archives/3619
https://www.ht-tax.or.jp/topics/kyumin-tetsuzuki/
https://ma-succeed.jp/content/knowledge/post-7219#chapter-2
https://www.nihon-ma.co.jp/columns/2022/x20220411/