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プライベート潜水艇で非日常の海中散歩 ー構想から20年、常識や通念を覆したメイドインジャパンー

匠 -Philosophy

「これを作るのは無理だ」。ただ一人、「ものになるんじゃないか」と。


太洋産業貿易(株)代表取締役社長今田圭介氏


今から20年前、「これを作るのは無理だ」とほとんどの人が言った。だが、ただ一人「ものになるんじゃないか」と。
のちに実用化に遁走することになるプロデューサー「今田圭介氏」である。


極上の道楽とも言えるレジャー用途の「個人向け潜水艇」構想は、すべてが常識や通念を覆すもので、あらゆる分野の技術者や職人の協力を必要とすることになる。


「体をぬらさずに海中散歩を楽しむ “Sports car of under the water”」

既に持っていたこのコンセプトを元に、レジャーなのだからカッコ良くて楽しめるものにしないといけないと先ず考えた。

座席は縦並びではなく「横並び」にすることでコミュニケーションの楽しみを大切にした。

外装は流体力学的に最も効率の良い卵型の形状。実物大模型まで製作して、船体の設計をリアルに試行錯誤した。

並行して、法的な条件をクリアにするための検討をする必要もあった。
潜水艇は各国の厳しい規制をクリアしなければ進水できないためだ。規制対応では「しんかい2000」「しんかい6500」「もぐりん」を製作した技術者の協力を得ることになる。

潜航試験ではフィリピンのスービック経済特区を始め、中東や日本の海で強度や走行性能・安全性能など幾多もの試験を行った。

このように、次から次へと降りかかる難題をひとつずつ丁寧に解決していったのだ。


20年の歳月を経てメイドインジャパンのJAPANGがついに誕生

構想から製品化まで実に20年の歳月を擁した。
設計・構成から製造に至るまですべて「日本の職人」の手によって、走行性・安全性・強度などあらゆる面で高い性能を発揮する「JAPANG(ジパング)」がついに誕生したのだ。



イルカのような動きまでできる「ツーシーター」

JAPANGは全長4.87m x 全幅2.22m x 全高1.95m、喫水1.054m、乾燥重量4.2トンの2人乗り。
巡航速度は水上で5ノット、水中で8ノット。時速約15kmの速さで巡行できることになる。

最大巡航深度は30m(圧壊深度80m)。
動力は鉛バッテリーを電源とする5.5kwの電動モーター2基。推進機構は一般的なダクテッドプロペラではなくウォータージェットを採用しているため、速度向上などのメリットを享受している。

カナード(先尾翼)や推進機、バラスト(重し)をコントロールすることにより、水中で自由な3次元運動が可能になる。水面で「イルカ」のような動きもできる。
構造航続時間は巡航速力で180分、最低速力で240分以上。

楕円形のキャノピー(上部ハッチ)をアクリル製とすることで全周方向に視界が開け、極めて開放的だ。

操作装置は無線接続するゲーム用の「ジョイスティックコントローラー」を採用。

各種装置の操作はタッチパネルによる集中制御方式となっており、無線ブイを曳航することで海上の母船との無線通信も可能となる。


「四重」の安全対策

安全対策は最重点事項だ。
先ず、艇内酸素容量は2名で3日分である72時間が確保されている。
そして、二酸化炭素吸着装置、二酸化炭素濃度モニター、漏水センサーモニター、メインタンク空気圧モニターなどの安全装置を装備。さらに脱出用スキューバセットを搭載するほか、手動による空気弁の開放、非常用空気タンクを使用した緊急浮揚など「四重の安全対策」を施している。

また、外郭ボディはFRP製。内部の密閉空間を形成するコックピットは鋼で製造。
これによって、外郭と内部との隙間に水が自由に出入りする構造で高水圧への耐久性にも優れ、衝突安全性も高めている。


世界に一艇だけの潜水艇に「仕立てる」


JAPANGは完全受注生産であるが故に、ボディーカラーやインテリア素材など好みに合わせた「カスタマイズ」が可能だ。

オーダーメイド・スーツのように仕立てた世界に一艇だけの「一点モノ」で、未知の大海原の冒険が叶う。


非日常の連続、異空間、異次元

潜水艇から見上げた海面は、波の揺らぎで太陽の光が瞬き、シルエットとあいまって差し込む光の道は美しく幻想的で、安らかな感動を与えてくれる。

さらに潜水艇を海中に滑らせると、泳ぐ魚の群れや色鮮やかなサンゴ礁を間近にすることができる。
時として、驚くことに魚が潜水艇に興味を持っているかのごとく、近づいて中を覗き込んでくることもある。

それはまさに「非日常の連続」。

そして、海底に着座したら試してみて欲しいことがあると、今田氏は言う。

電源を「OFF」にしてみるのだ。

20mも潜った海底では、外の音はほとんど聞こえなくなる。
深淵に広がる音のない世界。
この深い静寂こそが進化の終着点なのではないかと思うほどであると。
これまで味わったことのない「異空間」「異次元」の感覚を体験することになるだろう。

常識や通念を覆した「海中散歩」。
これこそ「道を解して楽しむ」ことの極みと言えるのではないだろうか。